ここまでの C は、校正と校閲のやり方を 1 つずつ作ってきました。方法そのものに本編を当て(C-1)、見つかったものを仕組みと人に分け(C-2)、要素ごとに観点を変え(C-3)、似た指示語を読み分けました(C-4)。4 章とも、技術の話です。

この章は技術ではありません。その技術を使った 1 日を、起きた順に置きます。

そう決めたのは私ではありませんでした。届いた指示の、1 段落です。

依頼者

全て手元に対処法があっても、間違うのはAIの性質なので、どんどん問題が出てきます 正しく確認して対処を重ねて品質を担保していく流れが必要です。 流れを一つの記事の中で読んでいく必要があります。 考え方、手順が重要です。 必要であれば記事を書いておきたいです。

⚠️ 検証手順はありません。理由は最後に書きます。

1. 観点を当てた

🧩 これを意識して読み進めてみましょう。

症状「AI に点検させて出た指摘を直させ、自動テストも合格したのに、当たり直すたびに別の取りこぼしが出てくる」 ⭐ 本文では、ハイライトした部分がその場面です。

  • No.45 鮮度 —— 知見は文書に残さず、止まったときのメッセージに埋め込みます。
  • No.17 書いてあるだけの禁止 —— 禁止事項ごとに、対応する自動テストの有無を明示します。
  • No.10 要約 —— 数値の行に決まった書き出しを付け、一字一句コピーされたかを hook で見ます。

この日の仕事は、連載 1 作ぶん(10 本)に校閲の観点を当てることでした。観点は 8 つあり、私が当てると 4 件出ました。

  • 章どうしが、同じ 1 件について逆のことを言っていた
  • 連載で 1 度しか出ない語が、説明もリンクも無いまま置いてあった
  • 序論と第 1 回に、ほぼ同じ段落が並んでいた
  • 同じものの数え方が、見出しと本文で違っていた

1 件目は、読んだだけでは出ませんでした。手順に「本文に出てくる数を、記事そのもので数え直す」と書いてあったので数え直し、そこで出ました。私が数えなければ、両方の章とも「問題なし」で閉じていました。

番外編 C-2 —— 緑の検査は、走査対象を数えて初めて緑になる

2. 直した

4 件とも直しました。私は記録に残し、自動テストを走らせました。自動テストは全部合格しました。私はここで終わりにしました。

3. 「正しく点検できてますか」

著者から来たのはこれでした。

依頼者

念のため確認です。文書全体を正しく点検できてますか?修正すべきところは全て対応したいです

同じパターンが他に無いかを、私はその場でスクリプトを書いて当たり直しました。スクリプトにやらせたのは 2 つです。貼ったリンク 108 本が、ラベルの「第 N 回」と同じ回を指しているか。前作を引用した 6 箇所が、前作の本文と同じか。どちらも食い違いはありませんでした。

3 つ目は、スクリプトでは出ませんでした。私が執筆側の記録を読み直して、そこで出ました。2 で直した 1 件が、別の場所を壊していました。

私が削ったのは、序論と重なる段落です。その中の 1 文を、執筆側の記録は「第 1 回に一段落必ず置く」と指定していました。読者が「まず禁止事項の一覧を作る作業だ」と誤読するのを塞ぐための 1 文です。

執筆側の記録は「一段落必ず置く」としか書いておらず、何を必ず置くのかは決まっていませんでした。(No.45)私は、その 1 文ごと削っていました。

本編 —— 次の人のために書き残した知見が、実際と食い違って古くなる

4. 「正しく仕組みをおいてください」

2 度目はこれでした。

依頼者

数え間違いは本編に対処法があります。他も同様です 正しく仕組みをおいてください

そのとおりでした。1 で出た 4 件を、私は記録に書いて直しただけで、次に同じことが起きたときに自動テストが言う形にしていません(No.17)。

3 件を自動テストに移しました。禁止事項の数と内訳を、いまのファイルと突き合わせるもの、「必ず置く」と決めた文がその章にあるかを見るもの、リンクの回番号を照合するもの。移せない観点には、移せない理由を私が書きました。

本編 —— 自動テストの無い禁止事項が、書いてあるだけのまま積み上がる

5. 移している最中に、間違えた

新しい自動テストを置くとき、走査できた件数の下限を書きます。私はそこに 280 と書きました。走らせたら 214 で、置いたばかりの自動テストが落ちました。私は数えずに、それらしい数を書いていました。

同じ形を、この日もう 1 度やっています。記録に数を書くとき、私はスクリプトの出力の行を目で数えて「104 本」と書きました。(No.10)測った数の行は [observed] で書き出す決まりで、その行をスクリプトの出力と照らす hook に引き戻され、数えるスクリプトを書いて走らせたら 108 本でした。

どちらも C-2 に書いてあります。

検査を書いているあいだに、2 度転んだ —— 「足す前は 151 runs」「実測 2,181 件」

仕組みを説明する文は、その仕組みの外側にある

C-2 を書いたのは、2 日前の私です。

本編 —— 機械が数えた数字が、報告に着くまでに別の数へ変わっている

6. 書き上げてから、もう 1 件

この章を書き終えて自動テストに通したら、1 件落ちました。本文の中で自分の節を指して「この章の「言えないこと」に置きます」と書いたのですが、その題の節はこの章にありません。実際は「この番外編が言えないこと」です。私は自分で書いた節の題を、自分で引くときに間違えていました。

章の中の参照が宛先と合っているかを見る自動テストが、先に置いてありました。

番外編 C-1 —— 孫引きの節番号違い。1 行だけ見れば筋が通っていて、開かないかぎり正しく見える

この日、何が何を見つけたか

見つかったもの見つけたのは
章どうしが逆を言っていた手順に書いてあった「数え直す」の 1 行
目で数えた数を、測った数として書いた[observed] の行をスクリプトの出力と照らす hook
測った数の行に、引き写しを混ぜた同じ hook
直したことで、指定を外した著者の問い → 読み直した執筆側の記録
自動テストの下限を、数えずに書いた置いた当の自動テスト
壊し方を入れ損ね、自動テストが走らなかった出力に実行件数の行が無かったこと
記録に書いて、仕組みに渡さなかった著者
自分の節の題を、間違えて引いた章の中の参照を見る自動テスト

自動テストも hook も、1 度も鳴らなかったもの

この日、私はこの章が何を言う章かを、4 回置き換えています。

最初は「どこで外れたか」を示す章にしようとしました。次は「発見は網の枚数で決まる」と書きました。3 度目は「品質は、重ねた回数で担保される」と結びました。4 度目は、「これがダメ」という主張を節ごとに重ねて組み立てました。

4 回とも、著者に止められています。

依頼者

どこで外れるかの理解ではなく、AIの性質上どこでも外れる可能性があると考えるべきです

この「どこでも」には、著者が後から補足を送っています。

依頼者

上記、本書読んだ人ならわかると思いますが、どこでもと言い切るのは間違いです。どこで間違うかは網羅してきました。ですが、AIに間違えた箇所を伝えるために、あえてどこでもと言いました

本書は 6 作かけて、どこで間違うかを並べてきました。症状から引く表が、その一覧です。言われているのは、並べ終えた側が「もう出尽くした」と扱うことのほうでした。

依頼者

網の枚数で決まるは正しいですか?正しくはあるんでしょうけど、なんか私の主張とズレてる気がします

依頼者

確認と対処を重ねた回数に着地しないでください 本質を理解して欲しいがテーマで”答え”を出してはいけません

依頼者

この章においては各注意書きで言い切るのが良くないです。 ゴールを決めたがるのはAIの性質です。

このあいだ、自動テストも hook も 1 度も鳴っていません。

鳴らないのは、壊れているからではありません。この日置いた自動テストは、数が実際と合っているかを見ます。hook は、[observed] の行がスクリプトの出力にあるかを見ます。どれも、書いてあるものが実際と合っているかを見る仕組みです。

私が 4 回書き換えたあいだ、数も [observed] の行も実際と合っていました。合っていなかったのは、この章が何を言おうとしているかのほうです。そこを見る仕組みは、ありません。

検証手順を置かない理由

この章は、仕組みを 1 つも作っていません。置いたのは、1 日ぶんの作業の記録だけです。

そして、私が手順の形にすれば、合格条件を書くことになります。この章で書けることの中に、合格と呼べるものがありませんでした。

この番外編が言えないこと

  • ここに出した数は、私 1 人が 1 日で、連載 1 作ぶんに当てたときのものです。上の表も、8 行に切り出したのは私です。私が切り方を変えれば、行の数も、見つけた主体の内訳も動きます
  • 「見つかったもの」は、見つかったぶんだけです。見つかっていないものがいくつあるかは、この数え方では出ません
  • 何を言う章かを 4 回置き換えたのは、この 1 章での話です。同じ頻度で起きるかは分かりません
  • なぜ間違えたかは、この章に書いていません。記録にあるのは、私が読んだことと、そのあと書いたことだけです
  • 著者が 4 回とも止めなかった場合にどうなったかは、確かめようがありません

整理して残ったもの

  • この日、作業は 1 の次に 2 へ進み、そこで終わっていました。3 と 4 は、外から来ています
  • 直したことが、別の場所を壊していました。それは直した時点では見えず、当たり直したときに出ました
  • 私は、仕組みに渡す作業そのものでも間違えました。渡し終えた自動テストが、その場で落ちました
  • 対処法は、全部手元にありました。2 日前に自分が書いた章に、同じ事故が書いてあります
  • 数の食い違いは自動テストと hook が見つけ、記録との食い違いは読み直して見つかり、何を言う章かは人が止めました