ここまでの C は、校正と校閲のやり方を 1 つずつ作ってきました。方法そのものに本編を当て(C-1)、見つかったものを機械と人に分け(C-2)、要素ごとに観点を変え(C-3)、指示の揺れを事故として残しました(C-4)。4 章とも、技術の話です。
この章は技術ではありません。その技術を使った 1 日を、起きた順に置きます。
⚠️ この番外編にも次回予告がありません。理由は番外編 A・B・C-1〜C-4 と同じです。 ⚠️ 検証手順もありません。理由は最後に書きます。
1. 観点を当てた
この日の仕事は、連載 1 作ぶん(10 本)に校閲の観点を当てることでした。観点は 8 つあり、当てると 4 件出ました。
- 章どうしが、同じ 1 件について逆のことを言っていた
- 連載で 1 度しか出ない語に、説明もリンクも無かった
- 序論と第 1 回に、ほぼ同じ段落が並んでいた
- 同じものの数え方が、見出しと本文で違っていた
1 件目は、読んだだけでは出ませんでした。手順に「本文の数を実物で数え直す」と書いてあったので数え直し、そこで出ました。数えなければ、両方の章とも「問題なし」で閉じていました。
番外編 C-2 —— 緑の検査は、走査対象を数えて初めて緑になる
2. 直した
4 件とも直しました。記録に残し、検査を走らせ、全部緑になりました。私はここで終わりにしました。
3. 「正しく点検できてますか」
著者から来たのはこれでした。
念のため確認です。文書全体を正しく点検できてますか?修正すべきところは全て対応したいです
同じ型が他に無いかを、機械で当たり直しました。本文が名指しした回と、貼ったリンクの指す回を全部突き合わせる。前作を引用した箇所を、前作の実物と 1 件ずつ比べる。どちらも食い違いはありませんでした。
3 つ目で出ました。2 で直した 1 件が、別の場所を壊していました。
序論と重なる段落を削ったのですが、削った 1 文を、執筆側の記録が「第 1 回に必ず置く」と指定していました。読者が「まず禁止事項の一覧を作る作業だ」と誤読するのを塞ぐための 1 文です。重複に見えたので、私はそれを外していました。
削れたのは、記録が「一段落必ず置く」としか書いておらず、何を必ず置くのかが決まっていなかったからです。
本編 —— 次の人のために書き残した知見が、実物と食い違って古くなる
4. 「正しく仕組みをおいてください」
2 度目はこれでした。
数え間違いは本編に対処法があります。他も同様です。正しく仕組みをおいてください
そのとおりでした。1 で出た 4 件を、私は記録に書いて直しただけで、次に同じことが起きたときに機械が言う形にしていません。
3 件を検査に移しました。禁止事項の数と内訳を実物と突き合わせるもの、「必ず置く」と決めた文がその章にあるかを見るもの、リンクの回番号を照合するもの。移せない観点には、移せない理由を書きました。
本編 —— 自動テストの無い禁止事項が、書いてあるだけのまま積み上がる
5. 移している最中に、間違えた
新しい検査を置くとき、走査できた件数の下限を書きます。私はそこに 280 と書きました。走らせたら 214 で、置いたばかりの検査が落ちました。数えずに、それらしい数を書いていました。
同じ形を、この日もう 1 度やっています。記録に数を書くとき、道具の出力の行を目で数えて「104 本」と書きました。数える道具を書いて走らせたら 108 本でした。
どちらも C-2 に書いてあります。
検査を書いているあいだに、2 度転んだ —— 「足す前は 151 runs でした」「裸の参照は 2,181 件あります」
仕組みを説明する文は、その仕組みの外側にある。
C-2 を書いたのは、1 日前の私です。
本編 —— 機械が数えた数字が、報告に着くまでに別の数へ変わっている
6. 書き上げてから、もう 1 件
この章を書き終えて検査に通したら、1 件落ちました。本文の中で自分の節を指して「この章の「言えないこと」に置きます」と書いたのですが、その題の節はこの章にありません。実物は「この番外編が言えないこと」です。自分で書いた節の題を、自分で引くときに間違えていました。
章の中の参照が宛先と合っているかを見る検査が、先に置いてありました。
番外編 C-1 —— 孫引きの節番号違い。1 行だけ見れば筋が通っていて、開かないかぎり正しく見える
この日、何が何を見つけたか
| 見つかったもの | 見つけたのは |
|---|---|
| 章どうしが逆を言っていた | 手順に書いてあった「数え直す」の 1 行 |
| 目で数えた数を、実測の印で書いた | 印の行を道具の出力と照らす仕組み |
| 実測の印の行に、引き写しを混ぜた | 同じ仕組み |
| 直したことで、指定を外した | 著者の問い → 読み直した執筆側の記録 |
| 検査の下限を、数えずに書いた | 置いた当の検査 |
| 壊し方を入れ損ね、テストが走らなかった | 出力に実行件数の行が無かったこと |
| 記録に書いて、仕組みに渡さなかった | 著者 |
| 自分の節の題を、間違えて引いた | 章の中の参照を見る検査 |
機械が、1 度も鳴らなかったもの
この日、私はこの章の芯を 3 回置き換えています。
最初は「どこで外れたか」を示す章にしようとしました。次は「発見は網の枚数で決まる」と書きました。3 度目は「品質は、重ねた回数で担保される」と結びました。
3 回とも、著者に止められています。
どこで外れるかの理解ではなく、AI の性質上どこでも外れる可能性があると考えるべきです
この「どこでも」は、そのときの私に向けた言い方です。本書は 6 作かけて、どこで間違うかを並べてきました。症状から引く表が、その一覧です。言われているのは、並べ終えた側が「もう出尽くした」と扱うことのほうでした。
網の枚数で決まるは正しいですか?正しくはあるんでしょうけど、なんか私の主張とズレてる気がします
確認と対処を重ねた回数に着地しないでください。本質を理解して欲しいがテーマで"答え"を出してはいけません
このあいだ、検査も hook も 1 度も鳴っていません。
鳴らないのは、壊れているからではありません。この日置いた検査は、数が実物と合っているかを見ます。hook は、実測の印の行が道具の出力にあるかを見ます。どれも、書かれたものが形として正しいかを見る仕組みです。
「この章は何を言う章か」は、そこに入っていません。私が「回数で担保される」と書いても、数は合っていて、印も揃っています。機械の側に、判定する材料がありません。
検証手順を置かない理由
C-1 と C-2 には検証手順を置きました。どちらも仕組みを作った回だからです。C-3 には置きませんでした。作ったのが観点表だけだったからです。
この章は、仕組みを 1 つも作っていません。置いたのは、1 日ぶんの作業の記録だけです。
そして、手順の形にすると合格条件を書くことになります。この章で書けることの中に、合格と呼べるものがありませんでした。
この番外編が言えないこと
- 母数は 1 日・1 人・1 作です。上の表も、8 行に切り出したのは私です。切り方を変えれば行の数も、見つけた主体の内訳も動きます
- 「見つかったもの」は、見つかったぶんだけです。見つかっていないものがいくつあるかは、この数え方では出ません
- 芯を 3 回置き換えたのは、この 1 章での話です。同じ頻度で起きるかは分かりません
- 著者が 3 回とも止めなかった場合にどうなったかは、確かめようがありません
整理して残ったもの
- この日、作業は 1 の次に 2 へ進み、そこで終わっていました。3 と 4 は、外から来ています
- 直したことが、別の場所を壊していました。それは直した時点では見えず、当たり直したときに出ました
- 仕組みに渡す作業そのものでも間違えました。渡し終えた検査が、その場で落ちました
- 対処法は、全部手元にありました。1 日前に自分が書いた章に、同じ事故が書いてあります
- 数の食い違いは機械が見つけ、記録との食い違いは読み直して見つかり、何を言う章かは人が止めました