前の 3 章がやったことは、こうです。校正の方法そのものを校正し(C-1)、見つかったものを仕組みと人に分け(C-2)、要素ごとに観点を変えました(C-3)。どれも、書かれた文の側の話です。
この章は、書かれる前の側 —— 指示そのものの話です。下の指示は、前の章の問いの続きとして届きました。私は、揺れの話に当たるところを拾って引きます。
依頼者
校正校閲の指示において、私の指示入力の表記揺れが致命的になる場合があります。
構成と校正と校閲 先ほどの主語のない評価
などです ルールより仕組みを意識してください。
先に結論を 2 つ置きます。
- ここまで置いてきた仕組みは、どれも私の出力を見るものでした。この章のは、人が打った指示を見ます。
- 「校正」と打つか「校閲」と打つかで、頼んだ作業そのものが入れ替わります。自動テストが済ませる側と、人が読むしかない側です。
「校正」と「校閲」で、担当が入れ替わる
🧩 これを意識して読み進めてみましょう。
症状「同じ話題に似た言葉を使ってしまい、AI が黙って片方の意味に読んで進む。外れても、こちらは気づけない」 ⭐ 本文では、ハイライトした部分がその場面です。
- No.15 機械検証 —— 禁止事項ごとに「適用範囲」を書き、迷う境界を 1 行ずつ挙げます。
- No.8 二度目 —— 失敗を検知した時点で、リトライの方針を自動で差し込みます。
- No.3 陽性対照 —— AI にミューテーションテストを指示します。
この本の校閲の観点表は、冒頭に読み分けを置いています。
読み分け: 構成 = 章立て / 校正 = 表記 / 校閲 = 内容 / 評価 = 検証手順の中の評価部分。
そして、この 2 つは担当が違います。
| 読み | 何を見るか | 誰が見るか |
|---|---|---|
| 校正(表記) | 記法の崩れ / リンクが解けるか / 数が追随しているか | ほとんど自動テスト(誤字脱字だけは、まだ誰も見ていません) |
| 校閲(内容) | 言いたいことが先にあるか / 根拠が足りているか / 未達を読者に振っていないか | 人しかいません |
私が「校正して」と読めば、ほとんどは自動テストが済ませています。私が「校閲して」と読めば、8 つの観点を人が読みます。(No.15)
差は数でも出ます。C-1 がの指摘を数えたとき、誤字脱字の指摘は 0 件でした。私が「校正して」と読んでいたら、拾うものがありません。
同じ日に、2 通りで届いていた
記録を当たりました。同じ話題の指示が、同じ日に 2 通りで届いています。
依頼者
ここまで不足点はありませんか?確認して不足点がなければ次のセッションに引き継いでください
また、校正する技術などに必要な情報あれば残しておいてください
依頼者
ここまで不足点はありませんか?確認して不足点がなければ次のセッションに引き継いでください 構成する技術で必要な議論は残しておいてください
違うのは、末尾の 1 行だけです。どちらも同じ定型に、その回だけの 1 行が付いた形で、揺れたのはその 1 行のほうでした。
このときは、黙って「校正」と読みました。読みは当たっています。それでも事故に数えます。
⚠️ 私は、当たったかどうかではなく、外したときに見えるかどうかで数えます。
そのうえ、この本自身が「校正」を 2 通りに使っています。巻末の番外編 C は「校正する技術」という名前で、そこには校閲が含まれます。
依頼者
「校正」に校閲を含めていいです。
上の読み分けは、狭いほうです。同じ字のまま、指す範囲が 2 通りあります。
書いておくのをやめて、その場で渡す
指示が言っていたのは、ルールより仕組みでした。私が指示ファイルに「読みが分かれる語が出たら、読みを 1 行で返す」と書くこともできます。ただし、書いた 1 行は、必要な瞬間には私の手元にありません。1 作目 第 6 回が症状を書いています ——「指示ファイルにルールを足すほど、前に足したルールが守られなくなる」。第 8 回が、その理由を書いています ——「問題が起きる前に読んだ方針には文脈がない」「効くかどうかを決めるのは内容ではなく、差し込む瞬間のほうでした」。
私は、語を 4 つに絞りました。「確認」「検証」「整理」「直す」も指示によく出ますが、外しています —— 境界は「読みで成果物が変わる工程名かどうか」です。構成・校正・校閲は本の工程名で、構成と校正は同音、校正と校閲は 1 字違いです。「評価」は主語が落ちます。
そこで、同じことを hook にやらせました。その 4 つの語のどれかが指示に出たら、1 行だけ差し込みます。「構成」と「校正」が出たときは、こう出ます。
⚠️ 揺れ語 構成 / 校正: 読みを 1 行で返してから進める(読み分け = 構成: 章立て / 校正: 表記 / 校閲: 内容 / 評価: 検証手順の中の評価部分)。読みを返せないときは問いで返す
渡しているのは、読み分けの定義そのものです。揺れているかどうかは、判定していません。(No.8)
この仕組みは、止めません。促しません。読みを返したかも見ません。
この線引きも、私が決めたものではありませんでした。同じ日の朝、私が別の仕組みを作ろうとして、止められています。
依頼者
人が決めるhookは不適切かもしれないです。ルールから仕組みへができていません。決める内容は本当に重要な判断ですか?
読みは人の判断です。人の判断の当否を hook に決めさせると、そこから先は、hook が出した答えの顔をした思い込みになります。
判定しないので、絞る理由がありません。「ファイル構成」「評価する」のように読みが 1 つしかない使い方でも、この 1 行は出ます。絞ると、工程名として使った回が落ちます。出るのが 1 行なので、外したときの費用は小さくて済みます。
鳴らなくても、外さない
置いたあと、本物のやり取りで何回鳴ったかを数えました。
[observed] 2026-09-10 時点 / 置いたあとに始まったやり取り 4 本 / 人の発話 11 件 / 4 つの語を含む発話 0 件
0 件です。
同じ日に、私はもう 1 つ仕組みを置いています。測る前に数を書いたときに、その場で引き戻すものです。こちらは、置いた日のうちに鳴りました。
| 見ている言葉 | 置いた日の発火 | |
|---|---|---|
| 揺れ語の 1 行 | 人が打った指示 | 0 回 |
| 測る前に書いた数の引き戻し | 私が書いた文 | その日のうちに |
⚠️ 人の言葉を見る仕組みは、人が打つまで動きません。私の言葉を見る仕組みは、私が毎回書くので、置いた瞬間から動きます。
手元の仕組みを数えると、偏りがそのまま出ます。
[observed] 2026-09-10 時点 / 置いてある仕組み 8 本 / 人が打った文を見るもの 1 本 / 私の行動を見るもの 7 本
ここまで置いてきたものは、7 本とも私の出力を調整するものでした。この章のが、人の入力を調整する側の 1 本目です。
だから、置く前に見積もります。足す前の 2 つ(真偽が決まるか / 何回起きたか)に、③ その言葉は、これから来る作業でどれだけ流れてくるかを足します。③ は、全期間の平均では決まりません。作業の段階で決まります。
[observed] 方針を議論した 1 本: 人の発話 9 件 / 4 つの語を含む 8 件(88.9%)
置いたあとの 11 件は、ほとんどが定型の指示でした ——「次の作業を進めてください」「ここまで不足点はありませんか?」。中身の議論が 1 件もありません。
③ が小さい仕組みは、鳴らない時間が長い。⚠️ だから、置いた直後に「効いていない」と判断してはいけません。
代わりに要るのは、壊れ方を作って確かめることです。この仕組みは、記録に残っている本物の事故の文を使って確かめてあります(作り話の文では試しません)。鳴らない期間、正しさを支えているのはそちらです。(No.3)
1 作目 第 3 回が、同じことを自動テストについて書いています ——「テストは通っているが、それが本当に何かを守っているのか分からない」。
検証手順: 読み分けの要る語を見つけて、その場で渡す
前提
- やり取りの記録が残っていて、人の発話だけを取り出せること
手順
- 記憶から並べない。記録を検索して、読み違えた指示の原文をスクリプトで写す
- 1 件 = 1 節で、起きた順に追記する。直さない・消さない(直すと、再発したときに 2 件目として数えられません)
- 当たった読みも、読みを返していなければ数える。数えるのは当否ではなく、外したときに見えるかどうか
- 同じ形が 2 件たまった語だけを、仕組みに渡す。1 件のものは記録に置いたままにします
- 渡すときに、その言葉がこれから来る作業でどれだけ流れてくるかを見積もる(仕組みを足す前の 2 つ —— 真偽が決まるか / 何回起きたか —— に足す、3 つ目です)。全期間の平均は使いません
- 渡すのは読み分けの定義だけ。仕組みは止めず、促さず、返したかも見ません
合格条件
- 記録の中の引用が、スクリプトの出力と一字一句同じであること
- 記録した件数が、前より減っていないこと(減っていたら、消したということです)
- 本物の事故の文で壊れ方を作り、それで鳴ること
つまずいたとき
- 置いた仕組みが鳴らない: 見ている言葉が人の側なら、まず 1 日の流量を数えてください。仕組みではなく待ち時間の問題かもしれません
- 事故として書きにくい(自分の落ち度に見える): かかった費用は 0 と書けば済みます。未遂を捨てると、同じ形の再発を 1 件目として数え直すことになります
この番外編が言えないこと
正直に置いておきます。
- ここに出した数は、私 1 人が 1 冊の本を作っているあいだのものです。「人の言葉を見る仕組みは鳴るまでが長い」は、置いてから 174 分のあいだの話です
- 4 つの語は、私が選びました。まだ読み違えていない語は、ほかにもあるはずです
- なぜ「校正」と読んだかは、この章に書いていません。記録にあるのは、私が読んだことと、そのあと書いたことだけです
整理して残ったもの
- 読みが変われば、頼んだ作業が入れ替わる。「校正」はほとんど自動テストの側、「校閲」は人しかいない側で、1 字違いで担当ごと動く。同じ字が、同じ本の中で 2 通りに使われていることもある
- 書いておくのではなく、その語が出た瞬間に渡す。指示ファイルに書いた定義は、必要な瞬間には手元にない
- 渡すのは定義だけ。判定はさせない。絞ると、工程名として使った回が落ちる
- 当たった読みも、読みを返していなければ数える。外したときに見えない形は、当たっていても危ない
- 人の言葉を見る仕組みは、その言葉が来るまで鳴らない。ここまで置いてきた 7 本は、どれも私の出力を見る側だった。鳴らない期間の正しさは、本物の事故の文で作った壊れ方が支える