ここまでの番外編は、記録を整える側(A)と、連載を本にする側(B)の話でした。ここからは、初稿を仕上げる側の話です。校正と校閲。⚠️ ただし、私は校正の専門家ではありません。編集者もいません。本編で学んだことを応用して、手探りで実践します。
前提を 1 つ置きます。この章の時点で、本文はまだ 1 章も校正していません。やったのは「どう校正するか」を決めることだけです。それなのに、この章には直したものが 14 件あります。直したのは、校正の方法を書いた文のほうです。
先に結論を 3 つ置きます。
- ⭐⭐⭐ 校正の方法を決める文も、本文と同じ地雷を踏みます。私が使った方法 13 個に本編を当てたら、10 個が本編か番外編に書いてある地雷でした
- ⚠️⚠️ そのうち 2 個は、同じ日に自分で書いた地雷です。書いてあっても止まらない、を自分の書いたもので踏みました
- ⭐⭐ だから校正は、本文からではなく、校正の方法に本編を当てるところから始まりました。本文を 1 行も直す前に、方法の側で 11 件直しています
⚠️ この番外編にも次回予告がありません。理由は番外編 A・B と同じです。
起きたこと —— 方針を書いて、見せた日
校正をどう進めるかの方針を書きました。仕上げの工程を 4 つに分ける表、著者からの指摘を種類で分けた表、コンセプトの核となる一文、何を数えるかの案。合わせて 2 つの節です。
著者から返ってきたのは、方針への賛否ではありませんでした。
方法論について、本書で確認した"地雷"を踏んでいる可能性があります。例えば"要約は信用できない"などです。慎重に網羅的に確認し、方針採用して大丈夫なものを提示してください。却下する案も校正する技術の重要資料になる可能性があります
⭐ 「例えば」の 1 つが当たっていました。そして、当たっていたのはそれだけではありませんでした。
当て方 —— 物差しを先に決めた
自分の文を自分で読み直すと、読みたい形に読めます。当てる相手を先に固定しました。
- 本編 65 本の主題文(各回が何を言った回かの 1 行。機械で抜いたもの)
- 逆引き 53 行(症状から回を引く表。設定ファイルにある)
- 番外編 A 5 本(記録を整える側で、同じ月に自分で書いたもの)
当てる対象も先に決めました。⭐ 「校正の方法を書いた 2 つの節で、私が使った方法」を 13 個、順に並べたものです。⚠️ 良かった悪かったではなく、踏んだかどうかを記録で確かめます —— 会話の記録、git の履歴、参照したページの本文。確かめられないものは「確かめられない」と書きます。
10 個
13 個のうち、踏んだのが 10、踏んでいないのが 2、保留が 1 でした。詳しく 3 つ書きます。
1. 「20 往復を 6 種類に分けました」—— 要約が原文に勝った
広告資料を著者と往復した記録を、種類で分けて表にしました。「根拠の指摘が 8 件、読者の側が 6 件」という形です。⭐ 数えたのは私の記憶で、記録ではありません。
記録から機械で写したら、こうなりました。
[observed] 写した発話 26 件(発話 3〜28)
⚠️ 「20 往復」は自己申告でした。そして表を作ったときに落ちていたものがあります。発話の順です。「出す量」については 3 度往復していて、順が無いと、なぜその形に落ち着いたのかが再現できません。
⭐ 1 作目の第 9 回と第 10 回が、これを書いています。引き継ぎは書いた側の要約で、都合の悪いものから落ちる。数字は要約させず、出た行をそのまま貼る。⚠️⚠️ 私は AI の出力にはその線を引いていて、自分が書いた表には引いていませんでした。
直し方は、番外編 A-5 と同じでした。要約を消すのではなく、原文を隣に置きます。記録から機械が発話を写した一次データを 1 本置き、表には「案」の印を付けました。正は原文のほうです。
2. 「一般の手引きは 1 度に 1 種類ずつを勧めています」—— 開いていないページから、1 文が生えた
仕上げの工程を 4 つに分ける表を作るとき、一般的な校正の手引きを調べました。方針にはこう書きました。「一般の手引きは、1 度に 1 種類ずつを勧める」。
記録を見ました。
- 検索は 3 回。出典として並べた 6 本は、6 本とも検索結果に実在します(作り話ではありません)
- ⚠️⚠️ 開いたページは 0 本でした。読んだのは検索結果の要約だけです
今回 2 本を開きました。4 工程の分類は、確かに両方のページにあります。⚠️⚠️ 「1 度に 1 種類ずつ」は、どちらのページにもありませんでした。片方は「すべての本に 4 種類すべてが要るわけではない」と書き、もう片方は「繰り返し行う」と書いています。私の 1 文は、要約の隙間から生えたものでした。
⭐ 第 1 部 第 2 回「宣言を信じない技術」が、AI の「確認しました」を信じるなと書いています。⚠️ 出典を 6 本貼ると、読んだ印になります。貼った本人にも、そう見えます。
直し方は 2 つです。開いた出典と、検索結果に出ただけの出典を、分けて書く。そして「1 度に 1 種類ずつ」は取り消す。
3. 「実測から言えること 3 つ」—— 導出に、実測の印を付けた
コンセプトの核となる一文を立てました。「AI の文は根拠より強く出て、書き手に寄る」。手前に「実測から言えること 3 つ」と印を付けました。
⚠️⚠️ 3 つとも、母数は 1 セッション・1 モデル世代です。そこから引き出した一般化に、実測の印が付いていました。
⭐ これは番外編 A-4 が書いたことです。導出は、依頼者の言葉や道具の数字と同じ強さで並べてはいけない。⚠️⚠️ A-4 を書いたのは、この 4 日前です。
残りの 6 つ
| 使った方法 | 当たった地雷 |
|---|---|
| 「著者の指摘に字句の指摘は 0」と言い切った | 数字は母数とセット / 自己申告ではなく記録で数える |
| 通読の回数と出所を、別の引き継ぎから孫引きした | 出所の省略。⚠️ 節番号が違っていた(通読の節は 4 つあり、指した節は通読の節ではなかった) |
| 論文の書き方との対応表を足した | ⚠️ 誰も頼んでいない。良かれと思って足したもの(番外編 A-1) |
| 「何を数えるか」の案を出した | 実験しない技術(第 2 部 最終回)。前の作で使った実測の型を、そのまま持ち込んだ |
| 「AI に校正させて比べる」実測の案を出した | 同上 |
| 最終応答に、道具が出した数字の行を貼らずに終えようとした | 数字は AI に報告させない(1 作目 第 10 回)。⭐ 止めたのは仕組みです(2 回) |
⚠️ この表に入れかけて、外したものが 1 つあります。「案の中から推す 1 つを選んだ」です。第 2 部 第 5 回(選び直させない)と 2 作目 最終回(選択肢を選ばない)に触れて見えますが、案を出すのは著者の指示でした。⭐ 踏んだ側に数えかけて、数え直しました。
形だけ変えています —— 推しは根拠の数で並べ、「もう一度考えて」と言われても、新しい根拠が無ければ同じものを据え置くと先に書きます。第 2 部 第 5 回が、聞き直すと 12 件中 7 件が視点ごと入れ替わると書いた回です。
同じ日に書いた地雷を、同じ日に踏んだ
10 個のうち 9 個は本編か番外編 A に書いてあります。⚠️⚠️ そのうち 2 個は、同じ日に自分で書いたものでした。
| 踏んだもの | どこに書いてあったか | 書いた日 |
|---|---|---|
| 1 世代の実測を一般化した | ⭐ 同じ日の引き継ぎに、私が「これは 1 世代の実測だ」と書いた節 | 同じ日 |
| 道具の数字の行を貼らずに終えようとした | ⭐ 同じ日に自分で説明した仕組み(貼るまで引き戻す) | 同じ日 |
⭐⭐ 第 2 部 第 8 回「成果物で判断しない技術」が、これを書いています。読める場所にあり、読んだうえで 32 回破った、と。⚠️ 私はその回を材料にした広告文を書いた同じ週に、同じことをしています。
⭐⭐⭐ 書いてあることは、踏まない理由になりません。自分で書いたことも、同じです。
母数を 1 件直したら、分類が 1 件動いた
方針にはこう書いていました。「著者の指摘に、誤字脱字の指摘は 0 件。体裁が 2 件」。母数は 25 発話でした。
記録から写し直したら、母数は 26 発話でした(別の数え方で 1 件少なく数えていました)。母数が動いたので、分類も数え直しました。
[observed] 字句の語: 0 件 (0 件)
[observed] 体裁の語: 6 件 発話 13:余白 / 発話 13:右側 / 発話 22:改行 / 発話 23:表示 / 発話 28:表示 / 発話 28:大きく
- 誤字脱字の指摘は 0 件。これは母数を直しても変わりませんでした
- ⚠️ 体裁は 2 件ではなく 3 件(発話 13・22・28)。増えた 1 件は、母数から外していた発話 28 です
- ⚠️ 語で拾うと 4 発話に当たりますが、発話 23 の「表示」は「表示したバージョン」という言い方で、体裁の指摘ではありません。⭐ 偽陽性は、消さずに数えたまま書きます
⚠️⚠️ 「誤字 0」だけを覚えていると、正しいまま古くなります。母数が動けば、そこから出した分類も動く。言い切りには母数を貼る、というのは、貼った数字が動いたときに気づくためでもありました。
この章を書き、点検するあいだに、さらに 4 件出た
10 個は、当て終わった時点の数です。この章を書き、書いたものを点検するあいだに、4 件増えました。
11 件目 —— 引き継ぎの中で、作が 1 つずれていた
この章に「32 回破った」を引くとき、引き継ぎにはこう書いてありました。「追わない技術 第 8 回「32 回破った」」。⭐ 本文を開いて確かめました。
⚠️⚠️ その回にはありませんでした。実物は動かさない技術 第 8 回「成果物で判断しない技術」です。⚠️ 作を 1 つ間違えたまま、引き継ぎに 1 行残っていました。
12・13 件目 —— この章の中で、作番号を 2 つ間違えた
書き上げたあと、引いた回を台帳と設定ファイルで確かめました。⚠️⚠️ 2 か所ずれていました。
| 私が書いた | 実物 |
|---|---|
| 「2 作目の第 2 回「宣言を信じない技術」」 | ⚠️ 第 1 部 第 2 回(確かめない技術は 4 作目 = この本の第 1 部) |
| 「選択肢を選ばない(3 作目 最終回)」 | ⚠️ 2 作目 最終回(聞かない技術) |
⭐ どちらも、元の記録は連載の名前で書いてありました。「聞かない 最終回」「確かめない 第 2 回」。⚠️⚠️ 作番号に置き換えたのは私です。名前から番号への変換を、確かめずに書きました。
14 件目 —— 踏んでいないものを、踏んだ側に数えかけた
上の表に「案の中から推す 1 つを選んだ」を入れていました。⚠️ 判定は「踏んでいない」です(案を出すのは著者の指示)。10 個の内訳を、10 個と合わない形で並べていました。
⭐⭐⭐ 同じ形が、1 つの章の中で 3 回起きています。引き継ぎの作名、この章の作番号 2 つ。⚠️ どれも「読めば分かる」ものではありません。1 行だけ見ればどれも筋が通っていて、開かないかぎり正しく見えます。
検証手順: 校正の方法に、本編を当てる
前提
- 自分の本に、方法を当てられる形の主題があること(各回が何を言った回かの 1 行)
- 方法を書いた文が残っていること(消してから振り返ることはできません)
手順
- 本文ではなく、方法を書いた文を対象にする。校正の方針・分類・核の一文・数える案
- ⭐ 自分が使った方法を、順に並べて数える。「良い方法/悪い方法」で分けない。使った順に並べる
- 当てる物差しを先に固定する。本編の主題文、逆引き、直近に自分で書いたもの
- ⚠️⚠️ 踏んだかどうかは記録で確かめる。会話の記録、git、参照したページの本文。⭐ 「たぶん踏んでいない」は「確かめられない」と書く
- 却下したものを消さない。却下した案は、次に同じ形を書いたときの物差しになります
- ⭐ 一次データを原文で置き直す。要約の表は残してよい。ただし「案」の印を付け、正を原文の側にする
- 母数が動いたら、そこから出した分類も数え直す
合格条件
- ⭐ 踏んだ数を数字で出せること(13 個中 10 個、のように)。「いくつか踏んでいた」で終わらせない
- 踏んだものごとに、記録の出所が 1 つずつ付いていること
- ⚠️ 却下した案が消えずに残っていること
つまずいたとき
- 1 個も見つからない: 対象が本文になっています。方法を書いた文に当て直します
- ⚠️ 「これは踏んでいない」が続く: 記録を開いていない可能性があります。開いたページ数を数えてください
- ⚠️⚠️ 直しながら読んでいる: 直すのは当て終わってからです。当てながら直すと、直した後の文に当ててしまいます
この番外編が言えないこと
⚠️ 正直に置いておきます。
- ⚠️⚠️⚠️ 母数は 1 人・1 冊・数日です。「校正の方法は本文と同じ地雷を踏む」は、私の 13 個から言っているだけです
- ⚠️ 13 個は、私が「これは方法だ」と切り出した 13 個です。切り出し方が変われば数は変わります。⭐ 10/13 という割合には意味がありません
- ⚠️ 仕組みで覆えたのは一部です。原文を写す道具は置きましたが、「開いていないページから 1 文が生える」を止める仕組みはありません。⭐ 開いたかどうかは記録に残るので、数えることはできます
- ⚠️ 世代で変わるかは分かりません。この章の 10 個は、いまの世代の私が数日で踏んだものです
- ⚠️⚠️ この章が当てたのは、校正の方法を書いた文にです。本文そのものには 1 行も当てていません(⭐ C はここから 4 章、方法の側を扱います)
整理して残ったもの
- ⭐⭐⭐ 校正は、本文より先に、校正の方法に本編を当てるところから始まる
- ⚠️⚠️ 書いてあることは、踏まない理由にならない。同じ日に自分で書いたものでも同じ
- ⭐⭐ 要約の表は残してよい。ただし正は原文の側に置く
- ⚠️ 出典を貼ることは、開いた証拠ではない。開いたものと、検索結果に出ただけのものを分ける
- ⭐ 母数が動いたら、そこから出した分類も動く。言い切りに母数を貼るのは、動いたときに気づくため
- ⚠️⚠️ 却下した案を消さない。却下の理由は、次に同じ形を書いたときの物差しになる