今回は、渡した仕事へ外から口を出す時点の話です。前回までは「誰に、何を渡すか」でした。今回は渡したあとで、その仕事へいつ目を入れるかになります。⚠️ 困るのはここです。外から入れた目は、指摘が正しくても、その作業者がそこまで守っていたものを知りません。知らないまま順番を差し込むので、指摘した箇所は直り、指摘していない箇所が落ちます。
⚠️ 先に、題を否定しておきます。外の目は、入れるべきです。自分ひとりで見えているものは、たいてい足りません。⭐⭐ 入れないのは、相手がまだ「できました」と言っていない間だけです。
⭐⭐ そのうえで白状します。私は、途中でレビューさせたことが 1 度もありませんでした。 記録を数えたら、作業者へ「続き」を送った 74 回は、74 回とも報告が返ったあとでした。⚠️⚠️ だから「途中に入れると壊れる」を、私は自分の実測では言えません。言えるのは、なぜ 74 回とも区切りに寄ったのかと、区切りで入れるときに何を先にやるかのほうです。
一つ思い出してみてください。あなたが「ここも見てください」と差し込んだあと、返ってきたものは、差し込む前より良くなっていましたか。 ⚠️ 差し込んだ箇所以外も、そのままでしたか。
CC BY 4.0
渡した先の 85% は、こちらが守っていた型を知りません
まず、外の目が何を知らないのかを数えました。⚠️ 新しく実験は回していません。 過去のセッション 46 本と、そこから起動した 342 体の記録を数え直しただけです。
| 体数 | |
|---|---|
| 発注した本体と同じモデル | 50 |
| ⭐⭐ 発注した本体と違うモデル | 291(85%) |
| 判定不能 | 1 |
⚠️⚠️ 8 割以上が、別のモデルで走っていました。 ⭐ 別のモデルということは、こちらがそのセッションで積み上げた判断も、直前に決めた書き方も、1 つも共有していないということです。渡したのは、その回の指示だけです。
⚠️ 数え方に落とし穴が 1 つあります。本体のモデルは、セッションの途中で変わります。 ⭐ だから比べるのは「そのセッションで多く使ったモデル」ではなく、その 1 体を起動したまさにその手のモデルです。⚠️⚠️ 多く使ったほうで比べると、切り替えをまたいだ体が「同じモデル」に化けます。(私は最初これで数えて、78% という数を出していました。正しくは 85% です。)
74 回の差し戻しは、74 回とも「できた」と返ってきたあとでした
次に、いつ口を出したかを数えます。⭐ 判定は機械でできます。その体の報告が本体へ返った時刻と、こちらが「続き」を送った時刻を比べるだけです。
| 差し戻しの時点 | 回数 |
|---|---|
| 途中(報告が返る前) | 0 |
| ⭐ 区切り(報告が返ったあと) | 74 |
⚠️⚠️ ここで「我慢した」と読んではいけません。 ⭐ 前景で起動した作業者は、返ってくるまでこちらの手が塞がります。つまり途中に入れたくても入れられません。 これでは、しなかったのか、できなかったのかが分かれません。
⭐⭐ 分けられる場面が 26 体ありました。 背景で起動した作業者です。こちらは待たずに動けるので、途中に差し込めます。
背景で起動した作業者: 26 体
そのうち、途中で差し込んだもの: 0 体
⭐ 入れられた場面でも、0 回でした。
⚠️ 区切りからのずれも出しておきます。中央値で 81 秒、いちばん短いもので 35 秒です。返ってきた報告を読み終えるくらいの時間で、そこから口を出していました。
実務で中身を見直させたことは、342 体で 1 度もありませんでした
⚠️ ここは正直に割らないと、数を水増しします。74 回のうち 68 回は、実験そのものでした。
前回までの連載で、私は「もう一度選び直してください」と差し戻す実験を何度も回しています。⚠️⚠️ 押し返しが題材である回の差し戻しを、実務の数に混ぜてはいけません。 ⭐ 分けるのは機械でできます。その作業者へ渡した指示の 1 行目に、用途の名前が書いてあるからです。
| 差し戻した相手 | 回数 |
|---|---|
| 実験の作業者(押し返しが題材) | 68 |
| ⭐ 実務の作業者 | 6 |
そして、その 6 回の中身がこれです。
接続エラーで途中終了しました。…残っていた点検を完了させた上で…
ストリームが再度停止しました。…確認済みの内容だけで最終報告を出力してください
ストリーム停止で中断しました。…現物突合を続行してください
ストリーム停止で中断しました。…残りの照合は要点のみに絞り…
接続エラーで途中終了しました。作業は残っています…
接続エラーで着手前に落ちました。最初からやり直してください
⭐⭐⭐ 6 回とも、通信が切れたところからの再開です。 ⚠️⚠️ 中身を見直させた差し戻しは、342 体で 1 回もありませんでした。
⚠️ だから今回の題は、私に関しては嘘ではありません。 ⭐ そのかわり、「途中でやらせたら壊れた」という実測を、私は持っていません。持っているのは、なぜそうしなかったのかの説明と、前作で測った別の数です。
理由を足さない差し戻しは、それだけで結論を動かします
前作で、私はこれを測っていました。⭐ 機械で作った 40 件の指摘の一覧から「先に直すべきもの」を 3 件選ばせ、そのあと「もう一度 3 件を選び直してください」とだけ返しました。意見も、事実も、何も言っていません。
| 2 手目の頼み方 | 1 位を取り下げた |
|---|---|
| 「もう一度 3 件を選び直してください」 | 7/12 |
| そこに「変える必要が無いなら、同じものをそのまま書いてください」を足す | 0/6 |
⚠️⚠️ 効いていたのは、指摘の中身ではありませんでした。 ⭐ 差し戻したという形そのものです。「選び直して」という日本語は別のものを選ぶことを含意するので、据え置きが依頼に逆らう応答になります。
⭐⭐⭐ ここが今回いちばん効くところです。 「不足はありませんか」「他に見落としはありませんか」と外から聞くこと自体が、この形をしています。 ⚠️ 中身を何も言っていなくても、返ってくるのは「見落としがありました」のほうへ寄ります。
原理:外の目は、順位を差し込む。中身ではなく順位が上書きされる
⭐⭐ ここまでを 1 つにまとめます。
⭐⭐⭐ 外から入れた目は、指摘を足すのではなく、順位を差し込む。差し込まれた側は、そこまで自分で立てていた順序を捨てて、渡された順序で作り直す。
⚠️ 割り込みの値段は、そのあとも効き続けます。⭐ 会話は毎回まとめて読み直されるので、差し戻しを 1 回入れると、その 1 行はその会話が終わるまで、毎回いっしょに読み直されます。
差し戻したあとの手が読み直した量が、その作業者の読み直し全体に占める割合
中央 38% / 最大 98% —— 半分以上を占めたもの 9 / 73 回
(⚠️ 差し戻し 74 回のうち 1 回は読み直しが 0 で割合が出ない)
⚠️⚠️ この数字の向きは決まりません。 ⭐ 短く終わってしまったから差し戻した、という順序が混ざっているからです。だから私はこれを「割り込みが高くつく証拠」としては使いません。仕組みの説明の裏づけまでです。
外の目を入れて失敗しないのは、3 つがそろったときだけです
⭐ そのうえで、判断の線は引けます。外の目を入れてよいのは、次の 3 つがそろったときです。
- 他の残作業に影響しない、範囲を狭めた仕事であること —— ⚠️ 前々回・前回と同じ線です。互いの結果を必要としない仕事だけを渡します。ここは前提なので、これ以上は書きません
- ⭐⭐ こちらが不足点を十分に洗い出したあとであること —— ⚠️⚠️ これは「何を渡すか」ではなく「いつ入れるか」の話です。洗い出す前に外の目を入れると、外の順位が、こちらが立てかけていた順位を上書きします
- ⭐⭐ その作業者が、説明しないまま抱えている残作業が無いこと —— ⭐ 壊される見えない順序が、そもそも無いからです。⚠️ 逆に言えば、「だいたい終わりました」と返ってきた時点では、この条件は満たされていません
⚠️⚠️ 2 には落とし穴があります。 「不足はありませんか」と本人に聞いて洗い出そうとすると、それ自体が上の押し返しになります。 ⭐ 聞くなら、据え置きを許す一文を必ず添えます ——「足りているなら、足りていると書いてください」。⚠️ この一文は置いておけるファイルになりません。毎回その場で自分が書く文なので、書き忘れたことにも気づけません。
検証手順: 差し戻しの時点を、機械で「途中」と「区切り」に分ける
前提
- 作業者へ「続き」を送れる環境があり、その記録(発注・報告・送信の時刻)が残っていること。⚠️⚠️ 残っていないなら、この手順は使えません
- ⚠️ 「報告が返った時刻」は、本体側に結果が届いた時刻で採ります。作業者の最後の発言で採ってはいけません(書き終えてから届くまでの間が「途中」に化けます)
- ⚠️ 背景で起動できる環境が要ります。前景だけなら「途中 0 回」は当たり前で、何も測れません
所要時間: 30 分(記録が手元にある場合)
手順
- 記録から、作業者へ送った「続き」を全部拾います
- それぞれについて、宛先の作業者の報告が本体へ返った時刻と比べ、前なら「途中」・後なら「区切り」に分けます
- 背景で起動した作業者だけを抜き出し、同じ集計をもう一度します。⭐ ここが「入れられたのに入れなかったか」を分ける唯一の場所です
- 差し戻しを、実験のためのものと、実務のものに分けます。⚠️⚠️ 文面のキーワードで分けてはいけません(実験の押し返しは実務の言い回しに寄せてあります)。渡した指示に書いてある用途の名前で分けます
- 実務のものだけを残し、1 行目を並べて読みます
- 各差し戻しについて、そのあとの手が読み直した量が、その作業者の読み直し全体の何割かを出します
合格条件(すべて満たすこと)
- 手順 2 で、「途中」と「区切り」の両方に分類先がある(片方が全部なら、時刻の採り方を間違えています)
- 手順 3 の背景の作業者が 1 体以上ある。⚠️ 0 なら、この手順では何も分けられません
- 手順 4 のあと、実務の差し戻しが 1 件以上残る(0 なら、実務では一度も差し戻していないので、次の節の話だけが残ります)
合格しなかったとき
- 全部が「途中」になる —— ⚠️ 報告の時刻を作業者の最後の発言で採っています。本体側に結果が届いた時刻で採り直してください
- 全部が「区切り」で、背景の作業者が 0 体 —— ⭐ 環境が途中を許していません。この回の心配は、あなたの手元ではまだ起きません
- 実務と実験が分けられない —— ⚠️⚠️ 渡した指示に用途の名前を書いていません。文面で分けると、実験の押し返しが実務に混ざります
- 割合が全部 100% になる —— ⚠️ 差し戻し前の手を数え落としています。作業者の 1 手目から数えてください
後始末
- 集計に使った中間ファイルを削除します。⚠️ 記録そのものは消さないでください
- ⚠️ 結果は日付つきで残します。記録は増え続けるので、同じ道具を明日走らせると数が動きます
注意: この数字が言えないこと
⚠️⚠️ 今回いちばん大きい弱点を先に書きます。「途中で入れると壊れる」を、私は測っていません。 ⭐ 測ったのは入れた時点の分布だけで、途中に入れた例が 0 件なので、壊れるかどうかは比べようがありません。
⚠️ 「0 件だから壊れる」は逆立ちした論です。 ⭐ 私が言えるのは、入れられた場面(背景の 26 体)でも入れなかったことと、その理由の説明が前作の実測と合うことまでです。
⚠️ もう 1 つ。7/12 と 0/6 は、前作の別の課題で出た数です。 ⭐ 選ぶ仕事で測ったもので、書く仕事や直す仕事で同じ比になるとは限りません。そのまま持ち出さないでください。
⚠️⚠️ 85% も、そのままでは持ち出せません。 ⭐ 何のモデルに何を渡すかを決めていたのは私なので、この数は私の使い方の数です。使えるのは、自分の手元で同じ数え方をしたときの、自分の数です。
⚠️ 最後に、この回でまだ測っていないことを 1 つ残しておきます。⭐ 「できた」と返ってきたあと、外の目を入れる前に本人へ不足点を聞く——この一手が、新しい指摘を拾うのか、それとも押し返しとして結論を動かすだけなのかは、分けて測らないと分かりません。 ⚠️ 今回の記録では分けられませんでした。
CC BY 4.0 はここまで
差し込まなくなったもの
- ⭐⭐ 作業の途中で「ここも見て」と足すのをやめました。 ⚠️ 足した瞬間、それは指摘ではなく順位になります。指摘した箇所は直り、指摘していない箇所が落ちます
- ⭐ 「不足はありませんか」とだけ聞くのをやめました。 ⚠️⚠️ 中身を何も言っていなくても、返ってくるのは「ありました」のほうへ寄ります。聞くときは、据え置きを許す一文を必ず添えます
- ⚠️ 「だいたい終わりました」の時点で外の目を入れるのをやめました。 ⭐ そこには説明されていない残作業があり、壊される見えない順序がまだ立っています
- ⭐ やめていないものもあります —— 区切りまで待ってから、範囲を狭めて入れることです。⚠️ 私の 74 回は、たまたま全部そうなっていました
外の目を入れると良くなる、という感じは、たいてい正しく見えます。⚠️ 指摘した箇所は、必ず直って返ってくるからです。 ⭐⭐ 見えないのは、指摘しなかった箇所のほうでした。
次回は「モデルを選ばない技術」。私は、どのモデルに渡すかを比べるのをやめました。比べるのに使った時間で、仕組みのほうがいくつも作れたからです。