私はもう AI のいうことを確かめません。「テストは通っています」も、「画面で確認しました」も、「修正は完了しました」も。それでも、確認は済んでいます。私が始める前に。このシリーズは、その状態を仕組み一つずつで作っていく連載です。
先に、読み方を書いておきます。この連載は、読むだけで追えます。各回は、現場で何が起きたかから始まり、何を置いて、何がなくなったかまで続きます。各回の終盤に「検証手順」という節がありますが、読み飛ばして構いません。自分の環境で試したくなったときに、戻ってくれば足ります。
まず一つだけ、数えてみてください。直近のセッションで、確かめるために何かを実行した回数です——テスト、撮影、動作確認。そのうち、実行する前に、どこまでやるかが決まっていたものは何回ありましたか。
まだ AI と一緒に開発していないなら、数える対象が無くて当然です。ここから先は、確認のどこが決まっていなかったのかを順に見ていきます。自分の回数が無くても、そのまま読めます。
ここまでに、似た文を 3 回書きました
「サブエージェントの入力だけは確かめろ」「目視で確認してくださいという依頼は断る」「AI が仕上げた作業は確認しない」。
読んでくださっている方には、冒頭の文に見覚えがあるはずです。確認しない、それでも大丈夫、という形は、これで 4 回目です。
3 つとも、何を確かめないかの話でした。今回は確かめ方の話です。
確かめる相手は、もういません
この連載は 4 作目です。
- 1 作目「読まない技術」: AI の出力を、読まなくて済む形にした
- 2 作目「AIの意見を聞かない技術」: AI の提案・判断を、二度検討しなくて済む形にした
- 3 作目「言わない技術」: 人間の入力を、言わなくて済む形にした
- 4 作目(本書): 確認そのものを、その場で決めなくて済む形にする
3 作を読み返して気づいたことがあります。私が確かめなくなったものは、全部「確かめる相手」のほうでした。AI の出力、AI の提案、本番の画面、AI の自己申告。何を確かめるかを、一つずつ手放してきました。
残っていたのは、確かめ方です。
二択で答えると、残りは AI が埋めます
確認は、やるか・やらないかの二択に見えます。実際にはその下に、いつ・何回・どこまで・どの手段で、がぶら下がっています。二択で答えた時点で、その下は誰かが埋めることになります。埋めるのは、その場にいる AI です。
埋め方は毎回違います。同じ変更でも、日によって走る量が変わります。⚠️ 変わったことに、私は気づけません。 返ってくるのは確認が済んだという報告で、何をどれだけやったかは、その中に書かれていないからです。私が待った時間だけが、そのぶん伸び縮みします。
確認を行為にすると、回数も範囲も手段も AI が決める。確認は、実行より先に決めておく。
3 作目は、穴を開けたまま終わりました
前作の本編の最終回に、こう書きました。
私に足りなかったのはレビューではありませんでした。置いた自動テストが何を見ていないかを、私が知らなかった。
自動テストは緑でした。緑は「見た範囲では問題がない」という意味しかないのに、報告に出るのは緑だけです。何を見ていないかは、どこにも出ません。 あのときは「数えるまで分からない」と書いて、そのまま連載を終えました。
この連載は、そこから始まります。
速くする話ではありません
確認の手数を減らす TIPS を並べる連載ではありません。手数を減らすだけなら 1 日で終わりますし、その日から見ていない範囲が静かに増えます。
扱うのは逆側です。速くする工夫は、何を見ていないかを隠します。 隠れたまま速くなったものは、確認と呼べません。だから各回は、確認を減らす仕組みと一緒に、減らした分がどこに出るかを必ず 1 つ置きます。出ない仕組みは置きません。
舞台は前 3 作と同じ、typingtube という、YouTube の音楽動画でタイピング練習ができる Web サービスです。個人で運営していて、本番で動いています。
⚠️ 前 3 作を読んでいなくても入れます——各回の冒頭に、前作で書いたことを 1 行だけ置くので、そこだけ読めば足ります。ただし、この連載は自動テストや hook を置き終えた後の話です。まだ置いていないなら、1 作目から読むほうが早い。
⚠️ もう一つ断っておきます。これは 1 人の現場の記録です。 複数人のチームでは、確認は他人に向けた報告でもあるので、自分の都合だけで決められない部分が残ります。
シリーズの構成
最終回で、5 つがどうつながって、私が確かめずに済むかをまとめます。
各回はファイルやスクリプトを一つ置けば完結します。第 3 回から第 5 回は、同じ 1 本のスクリプトに順に足していくので、その 3 つだけは順に読んでください。
全部を今日置く必要はありません——冒頭に、自分の環境で症状を確かめる操作を置いてあるので、症状が出ている回から拾ってください。
次回は「スクリーンショットを撮らない技術」。私は、AI に画面を撮らせるのをやめました。それでも、見た目の崩れは見つかっています。