私はもう AI のいうことを確かめません。確かめるためにプロダクトを動かすこともなくなりました。新しいモデルが出た日に乗り換えることもやめました。それで品質が落ちたかというと、落ちていません。この本は、その状態を仕組み一つずつで作っていった 3 つの連載を、前巻に続けてもう 1 冊に収めたものです。
3 つの連載は、順に書きました。書き終えてから並べてみると、減らしたものが 1 つずつ違っていました。
- 第 1 部「確かめない技術」: AI の報告を、確かめなくて済む形にする
- 第 2 部「動かさない技術」: 効くと信じていることを、実験で測り直す
- 第 3 部「追わない技術」: モデルと体制の切り替えを、費用の一点から決める
やることは前巻と同じです。ルールから仕組みへ。扱うものが、報告、実感、計算資源と一つずつ変わるだけです。
「N 作目」の読み方
本文には「1 作目」のように、連載を通し番号で呼ぶ箇所が多くあります。この本の 3 部を指すもの(4〜6 作目)は「第 N 部」に読み替えてあります。前巻を指すものは、連載として書いたときの呼び名のまま残しました。次の表で読み替えてください。
| 本文の呼び名 | どこにあるか |
|---|---|
| 1 作目「読まない技術」 | 前巻 第 1 部 |
| 2 作目「AIの意見を聞かない技術」 | 前巻 第 2 部 |
| 3 作目「言わない技術」 | 前巻 第 3 部 |
| 4 作目「確かめない技術」 | この本 第 1 部 |
| 5 作目「動かさない技術」 | この本 第 2 部 |
| 6 作目「追わない技術」 | この本 第 3 部 |
「前作」「前の 4 作」「前の 5 作」も、この表のとおりです。本文の中の「この連載」は、その部のことです。
この本の読み方
各章は独立しています。多くの章の冒頭に、自分の環境で症状を確かめる操作を一つ置いてあるので、症状が出ている章から拾ってください。症状が出ていない章も、読む値打ちは変わりません。各章が渡すのは数え方で、数の大きさは環境で変わっても、数え方は変わらないからです。
前巻を読んでいなくても入れます。前巻で置いた仕組みを引くときは、本文がその場で 1 行で言い直しています。
各回のタイトルは、その回の要約です。要約と本文の距離は、最終回と巻末の番外編に書いてあります。
舞台
舞台は前巻と同じです。私の手元の本番プロジェクト——typingtube という、YouTube の音楽動画でタイピング練習ができる Web サービスです。個人で運営していて、本番で動いています。本文に出てくる数字と実物は、全部このプロジェクトのものです。
これは 1 人の現場の記録です。 道具は Claude Code です。前巻と同じく、多くの章で AI のコマンド実行に割り込む hook を使いますが、使っているツールになければ作ればいい。要るのは「読んでいなければ動けない構造」で、hook はその実装手段の一つにすぎません。
巻末の番外編
本文の 3 部は、前巻から数えて 6 作すべてが「〜しない技術」でした。巻末の番外編だけ、向きが逆です。「整理する技術」——6 作かけて仕組みを足した結果、増えてしまった記録をどう扱うか。「執筆・構成する技術」——連載をこの本にする途中で、何を機械に置き、何を人が決めたか。「校正する技術」——その初稿を仕上げる側。校正と校閲を、本編で学んだことを応用して、手探りで実践します。どれも、本文で置いた技術を自分の記録に当て直した実践の記録です。
番外編に次回予告はありません。起きたことを、起きた順に並べてあります。
目次
| 部 | 章 | 序論の 1 行目 |
|---|---|---|
| 第 1 部 確かめない技術 | 序論・第 1〜5 回・最終回 | 私はもう AI のいうことを確かめません。 |
| 第 2 部 動かさない技術 | 序論・第 1〜9 回・最終回 | 私はもう、確かめるためにプロダクトを動かしません。 |
| 第 3 部 追わない技術 | 序論・第 1〜8 回・最終回 | 私はもう、新しいモデルが出た日に乗り換えません。 |
| 番外編 A 整理する技術 | A-1〜 | — |
| 番外編 B 執筆・構成する技術 | B-1〜 | — |
| 番外編 C 校正する技術 | C-1〜 | — |
| 用語集 | 付録 J(前巻と共通) | — |
| あとがき | — | — |
各部の章は、部の中で番号順に並んでいます。
まずは、第 1 部の序論からどうぞ。