私が AI に指示することは、ほとんどなくなりました。連載「言わない技術」は、その状態を仕組み一つずつで作ってきた記録で、この記事が最終回です。各回の仕組みは序論の一覧から辿れます。

白状することが一つあります。

私は、実はたくさん指示します

3 作 37 本かけて「読まない」「聞かない」「言わない」と書いてきて、これです。

証拠は第 1 回に書きました。指示ファイルに「コミット前に必ず実行」と足したのは 2 回だけで、どちらも、その hook を置いたその日でした。hook を作った本人が、同じコミットの中で、同じ内容を言葉でも書いている。忘れてから重複させたのではありません。置いた瞬間から、二重に書いていました。 そして 5 か月、言葉のほうは 1 行も減っていません。

この連載でいちばん多く書いた文は、これです。

〜と思っていました。違いました。

機構があるなら節ごと消せると思っていました(第 1 回)。手元に手順はもう無いと思っていました(第 6 回)。数を決めて渡せば埋まると思っていました(第 7 回)。名指しと目印は 1 対 1 だと思っていました(第 9 回)。宙に浮いたままだと思っていました(第 10 回)。26 本の自動テストが何を見ていないかは、数えるまで知りませんでした(第 11 回)。

数えました

序論で、自分が打った言葉を数えてもらいました。私も数えました。この連載の最後の 8 本を書くあいだに打ったのは、11 回。うち 8 回が、1 作目の最終回に書いた定型文 2 つでした。

⚠️ ただし、言い回しが違っていました。「ないですか」が「ありませんか」に、「次のセッションに引き継いでください」が「次の作業を進めてください」に化けています。自分で書いた定型文を、正確には覚えていませんでした。

2 作目の序論に書いたことが、そのまま返ってきました。

AI は却下を覚えない。あなたにとっては二度目ですが、AI にとっては毎回が一度目です。

私も同じでした。自分が何を置いたか覚えていないので、毎回、言葉でも書きます。

1 作目の最終回には、こう書いてあります。

この間、私はほとんど何も読んでいません。そして、ほとんど何も言っていません

読んでいないほうは、1 作目が 14 本かけて説明しました。言っていないほうを説明するのに、13 本かかりました。

しなくなったこと

読まない技術AIの意見を聞かない技術言わない技術
テスト結果を読まない提案を検討しない検証を指示しない
メモリを読まない禁止を書かない具体的な指示を出さない
単体テストを読まない禁止ルールを作らない不具合詳細を書かない
スキルを使わない自動テストを書かない計画を書けと言わない
ルールを読まないAI の確認依頼を断る念を押さない
共有メモリを整理しないAI の話を聞かないAI を問い詰めない
修正履歴を読まないルールを整理しないAI にダメ出ししない
引き継ぎを読まない選択肢を選ばないAI に考えさせない
口を挟まない一度確かめたら、サブエージェントの入力を確かめない質問に答えない
作業結果を読まないAI にレビューをさせない
一度読んだら、サブエージェントのログを読まない一度書いたら、サブエージェントに細かく指示しない

31 個。 読むのも、聞くのも、言うのも、やめました。

最後の 3 つは、3 作とも同じ場所に 1 本ずつある、命令形の回です。サブエージェントの出力だけは読め1 作目 第 5 回)、入力だけは、確かめろ2 作目 第 4 回)、出力だけは、細かく指示しろ3 作目 第 6 回)。読め、確かめろ、指示しろ。 37 本のうち、命令形で書いたのはこの 3 本だけです。どれも一度だけで、その一度が仕組みの置き場所を教えてくれました。置いたあとは、読むのも、確かめるのも、指示するのも、やめています。だから表に入っています。


並べてみて、気づきました。仕組みは、もう全部置き終わっています。

私は、それを忘れていただけでした。

私はこれから、何もしなくてよくなります。


各回の仕組みの置き方は序論の一覧からどうぞ。この仕組みで作られたものは typingtube で動いています。

連載「言わない技術」